意外と知らない馬の病気・怪我とその治療法とは!? ~馬だって怪我や病気は辛いんです~

  • 2019年8月25日
  • 2022年9月22日
  • 馬知識
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意外と知らない馬の病気・怪我と治療法とは!? ~馬だって怪我や病気は辛いんです~

「馬は肢が大事なんでしょ?」、「馬の腹痛は結構リスクが高いらしい?」というのは、みなさん知っている方も多いと思います。

私も実際に腹痛が致命傷なった馬も多く見てきました。

また、競争馬はレースでの最高時速は60~70㎞あり、その間馬は4本の肢が同時に着地することはありません。
勢いのついた400㎏以上の馬体を1本の肢で支える瞬間もあるのです。

若いサラブレッドは成長段階から日々ハードなトレーニングを受けなければいけないこともあり、サラブレッドはいつも怪我や病気と隣合わせで走っていると言っても過言ではありません。

あまり多くは知らない、アスリートたちの怪我や病気の種類と、その治療法や可能なものは予防法をご紹介していきます。


 

意外と知らない馬の病気・怪我と治療法とは!? ~馬だって怪我や病気は辛いんです~

①怪我について

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JRA HPより 馬体の名称
ソエ

管骨の骨膜炎を通称ソエと言います。(上図の43の骨を管骨)

サラブレッドでレースに出る馬はほとんどが一度は経験する疾患です。

若い骨が完全に発育する前に強い調教を行うとできる疲労骨折の一種でもあります。

管骨の腫れが出てきたら、休ませる・ソエ焼き(今はあまりないですが熱したコテで焼き治療)・レーザー治療などが治療法です。
骨格がしっかりしてくれば自然と治るので、5歳くらいになった馬はだいたい落ち着いています。

ハコウ

歩様の悪い状態をハコウと言います。

ハコウの原因はさまざまですが、腱の炎症や蹄の問題が多い傾向にあります。

基本的に歩様の良し悪しを判断するのは速歩で行います。

常歩と駈歩は馬の動きが複雑なので判断しにくいのですが、曳馬で明らかに動きに違和感を感じるときはスタッフなど関係者に伝えることをオススメします。

屈腱炎(エビ)
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JRA HPより 前肢図

主に浅屈腱と深屈腱に発症する腱の一部断裂による炎症を屈腱炎(くっけんえん)と言います。

発祥すると腱が腫れあがり見た目が海老に見えるため『エビ・エビハラ』とも呼ばれています。

現在、治療は超音波・レーザー治療と患部冷却と薬の塗布を行います。

原因は継続的に反復した運動によって起こると推測されており、一度発症すると患部の強度が元に戻らないため、再発の可能性が高い怪我です。
ですから、競走馬には『不治の病』・『競走馬のがん』と言われており、命に直接は関係はないですが、競走馬の引退の原因の一つです。
エビが原因で引退した馬は、乗馬の馬として治療しながら活躍している馬も数多くいます。

骨折・脱臼・アキレス腱断裂

これらは『予後不良』といって安楽死しないといけない可能性のある重傷です。(これらのケガ以外でも毎年約300頭くらいが悲しい運命をたどっています。)

もちろん、治って復活し馬術競技に出ている馬もたくさんいます。

レース以外にも調教(競馬・乗馬など)でも起こりうるケガですので、馬を触る人には切っても切り離せないものです。

骨瘤

 骨瘤(こつりゅう)は骨折の一種ですが、管骨(外側か内側または両側)にできるコブ状の隆起です。

骨なので成長過程の馬はだいたい発症するとだんだん大きくなっていきます。

患部に強い熱や痛みがなければそのままレースに出ることも多く、乗馬の馬もコブはあっても痛みがなければ普通に運動しています。

競走馬のダンツフレームはずっと骨瘤が残っていましたが、ブラックホークやメイショウオウドウなどのように、時間の経過とケアによりコブが目立たないくらいに小さく良化したケースもあります。

治療は主に高周波・レーザー・氷冷・薬の塗布です。

ふ腫

球節(図:馬体の名称42)にできるプクプクした腫瘍ができます。

柔らかいうちはさほど気にする必要もないですが、固くなってないかチェックが必要です。

簡単に言ったらむくみです。

コズミ

全身や局部的な筋肉痛を『コズミ』と言います。

疲れがたまっていたり、急激な運動により筋肉が固くなる症状が出ます。

軽いコズミであれば、十分なウォーミングアップで体をほぐせば治ります。

しかし、重度なものになると針治療で代謝を良くしてコリをとったりもしますので、人間と治療は一緒です。

スパービン

後ろ脚の 飛節(図:馬体の名称26)部分にコブができて炎症を起こすことをスパービンと言います。(飛節版骨瘤といったら分かりやすいかもしれません。)

これも若い馬になりやすいものですが、あまり深刻なものではありません。

一口馬主をされている方はご存知かもしれませんが、これが原因で休養することはあります。

フレグモーネ

傷口からバイ菌が入り、患部が化膿してとてつもなく腫れます。

馬の体温も高温になるため、肢が腫れてるからむくみをとろうとして曳馬をするのはNGです。(余談ですが、指導者テストに曳馬NGはよく出ます。)

注射で抗生物質を打ったり、患部をキレイに保ち厩舎巻きという馬の包帯みたいなものを巻いて治療します。

蹄叉腐乱

蹄の裏の蹄叉部分が腐り悪臭をはなつ病気です。

悪化すると蹄叉がボロボロ崩れ、出血したりすると歩様に影響が出るので注意が必要です。

蹄叉腐乱を引き起こす菌を殺すために薬を脱脂綿に湿らせて、蹄叉腐乱の患部にはめ込み治療します。

予防としては、馬房や馬の蹄を清潔に適度に乾燥させておくことが重要です。

 ※馬房について理解ができ、蹄叉腐乱予防のイメージがしやすい記事です!

裂蹄(れってい)

蹄に亀裂が入り割れてしまうことを裂蹄と言います。

乾燥しすぎや衛生管理、運動時の前肢と後肢の衝突などが原因としては多いです。

乾燥時には蹄に蹄油を塗って上げる裂蹄防止につながります。

※馬の手入れ道具一覧はこちら(種類や使い方がわかります) 

蟻洞(ぎどう)

蟻洞とは蹄に穴が開き、蹄の中が空洞になってしまう状態をいいます。

蹄を前と後に半分に分けた時に、半分より前にある蟻洞ならまだマシですが、半分より後ろ側にあるとハコウの危険性が高いので、早急の治療を行った方が良いです。

治療は蹄叉腐乱と同じで薬を穴に詰める方法で、蹄が伸び良化を待ちます。

挫跖(ざせき)

石を踏んでしまって、蹄の裏が圧迫されたことによる炎症を挫跖と言います。

重症の場合は歩様が悪くなります。

予防として、馬場や馬道にある石などの固いものは見つけたら拾っておくことが大切です。

蹄葉炎

馬の肢は蹄機作用(ポンピング効果)で血液を循環する役割を担っています。

ですが、肢の故障(怪我)などで動けずに他の肢だけに体重をのせ続けると、蹄の裏の血液の循環が阻害され、蹄の内部に炎症が起こり激しい痛みが起こります。

これを蹄葉炎といいます。

女傑と言われた名牝馬ウオッカは蹄葉炎が原因で亡くなっています。

症状が重くなると蹄が変形し、蹄骨が蹄の裏側へ抜け出ることもあります。

馬は体重が重いため、病状の進行をとめるのは難しく、獣医や装蹄師が頭を悩ませる病気の一つです。

②病気について

熱発・風邪

人間の症状と全く同じで、セキ・鼻水・食欲不振・熱発などを引き起こします。

現在、インフルエンザの予防接種は必須なので、熱発はただの風邪で起こることが多いです。

馬どおしは風邪がうつりますが、人間にはうつらないので大丈夫です。

疝痛(腹痛)

起こる可能性がそこそこ高い割に、時に命にかかわる重症になる病気です。

疝痛(せんつう)は簡単に言うと腹痛です。

馬房で、お腹をずっと見ながらしょんぼり痛そうにしていたり、寝転がったり前がきしてうったえたりします。

食欲不振で変だなと思うときは熱発の場合もあるので、必ず体温計で熱を計ります。

治療は元気よく曳馬し寝転がせないようにしないと、腸捻転を引き起こす可能性があります。(腸捻転が命をおびやかします。)

早く気づいてあげたり、不適切なおやつはあげないようにしてください。

 

ノド鳴り

気管支炎の様な症状を指します。

空気の通りが悪くなるので肺活量が減り、長距離レースではバテやすくなります。

ですが、湿度が高くなると症状がマシになり、本来の力を発揮できます。

鼻出血(びしゅっけつ)

鼻出血とは鼻血のことです。

馬は鼻だけで呼吸をするので、鼻血は呼吸困難につながってしまいます。

ただ切れて出ているだけなら良いですが、あまりにも量が多い・止まらない場合は肺の問題も考えられるので注意が必要です。

肺が原因の場合再発の可能性があるので、競馬では1回目は1ヶ月・2回目は2ヶ月の出場停止期間が設けられています。

皮膚病

皮膚病は走ったり、運動に支障をきたさないことがほとんどですが、精神的・肉体的な問題は何かしらあります。

ケイクン(毛についた汚れが固まったもの)・じん麻疹などが例です。

原因としては①ストレス②管理体制の不備③ブラシやタオルを介して他馬からうつる④飼い葉に混入した虫や鳥の糞をたべてしまうなどが挙げられます。

ケイクンは②、じん麻疹は④の場合が多いです。

夏負け(ふく)

 夏バテの状態でパフォーマンスは低下します。

状態が悪化してくると熱中症のような状態になるので、鼻を大きく広げて呼吸をしていたり、目の周りの毛が抜けて黒く見える馬などは特にケアをないといけません。

馬の首や股下などの太い血管を水で冷やして、良く水を切ってから扇風機などに当てて冷やしてあげてください。

良く水を切らないと、体についた水の膜がお湯の様に温まってしまい冷えにくくなってしまいますので、水が滴らないところまでしっかり水を切ってあげることが大事です!

 もう少し馬のことを知ってみたいと思われる方はこちらをご覧ください!

今回は『馬の病気・怪我』についてご紹介していきました。

馬の怪我や病気について、1人でも多くの方が知っていただけて良い体・良い精神を馬に与えられる方が増えれば、幸せな馬は増えていきます。

一般的には幸せな馬が増えて、不幸になる人はいないと思います。

ですから、馬に触れる環境を手に入れられた方はぜひ幸せな馬を増やしていただき、自分も幸せになり、それを見た周りの人も幸せになる。

そんな循環が生まれてほしいと思います。

1人では絶対に無理なので、馬の幸せを願う共犯者(協力者)の方に届いてほしいと願っています!

最後まで読んでいただきありがとうございました!!

wagian

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